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『ポポイ』倉橋由美子 [『2011無謀なる366篇』]

『2011無謀なる366篇』vol.15

岡山入りして五日めにして現地休暇の日。雨の降るなか岡山城へ行く。天守閣から後楽園庭園にほぼ人気のないのを確認し、(天守閣は六階です。)一段また一段と下がって行くと、「休憩室」と云う部屋がありそこで、岡山城を築いた宇喜田秀家の悲しい末路を語る映像を視ることになる。うふうむと唸ってからお城をあとに。後楽園に入り二時間近く散策する。雨はいつのまにか上がっていた。さあビールでもと、休館日の「竹久夢二館」をUターンして市街へと戻り、ただのラーメン屋で餃子にラーメン、野菜炒めにビール二本。あらら健康的散策から一挙にか弱い自堕落へ。凹んだかと思われた腹一気にふくれる。もう帰ろと思って丸善のビル通り抜けようとすると、古本市など一角でこじんまりとやっていた。そこでほろ酔いで買い求めた三冊の本の一冊がこれ。

ポポイ倉橋由美子110301_192811.jpg

以下引用〜


 予定してあった無花果の木の下の柔らかい土をシャベルで掘って首を埋める。最後に見た時、首はまだ目を開けてゐた。私はヨハネの首に接吻したサロメほど悪趣味ではない。首が湿った土の中で気持ちよく眠り、冬を越して、来年の春に芽を吹いて、綺麗な花を咲かせてくれれば素晴らしいだらうに、と首のために願ふにとどめよう。秋の気配を運ぶ冷たい朝の風が吹いて、目にしみたかと思ふと、どこかの栓が緩んだかのやうに涙が出た。


〜引用終り

久しぶりの「無謀」でした。


   倉橋由美子『ポポイ』一九八七年九月一六日 第一刷発行
                  一〇月一日 第二刷発行
   発行所 株式会社福武書店
   初出誌 「海燕」一九八七年八月号
   装丁  杉本典巳



  
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