『其のなかのいっこ』04/22/2013/04120 [日刊忘れ女たち]
10:40 byouin-rouka-kaidan 04/22/2013
其のなかのいっこ
ぱたぱたと足音がする
鳥はどの木の枝にも飛んではこない
びきーっちっ
あんなにはずんで鳴いていたのに
あたしたちのうら側にあなたたちが巣くう
鳥の鳴き声を検索することも
もう要らない
帝京大学付属病院の階段をおりてゆきながらふとそうおもう
いまは切れ切れの電波が哀しく割れたピアノを歌う
頷きながら
足音になってあなたの耳のうしろに隠れる
あなたは無謀のなかに買い物をする
顔の左半分はひどいしびれだ
だからマクロビオティックにほろ甘いお菓子のことをおもい
白い単四ラジオが
寒い春の水槽のなかで腰をふっている
此所へ来るまえに
あなたの所へゆかなかった
戻って来れないかもと心配したのだ
愛おしいものが消えてゆく
あなたから視ればあたしも其のなかのいっこ
だからあたしたちは食べあっている
きのうあなたのふとももを食べた
あなたにはあたしの陰茎をあげる
炬燵のなかで食べあったときも
こゝろは揺れて
こゝろが終わった
愛しいものが消えてゆく
階段を上がってくるときにもう一度そうおもう
ずっと此処にいたいのだろうか
こゝろはどの部屋にも飛んではこない
しんけん勝負で恋のおもいでをたべている
血を切って血を繋ぐ
愛おしいものは切って繋いできえてゆく
ぱたぱたと
まだ廊下を歩いているひとがいる
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