忘れ女たち09/05/2012 shinsaibashi-osaka-2/7 [日刊忘れ女たち]
18:47 09/17/2012 Fuessen
日刊忘れ女たち09/05/2012/03974
草の厚みを知らない
その人は踏んでいることを知らない
ゴールデンウィークとかに
自家用車で乗りつけて
仕合わせだ
豊かだなあささやかに
目頭のおくのほうで呟き
草の厚みを踏んでゆくように
豊かさを歩くことはできない
草にこゝろがあるのかどうか
そう思ってこゝろについての古い本を買った
ほんとうはあたしにこゝろがあるのかどうかを
知りたいのだけれど
今日秋の曇り空のした
窓を開け放つと
鴉がひとこえ鳴き
名のわからないちいさな鳥の声が続く
オートバイが走り
列車の通過音が反響する
家族旅行のことなど思い浮かべても
とくに感慨があるわけでもない
甦るものは
あたしたちの布地の温度だけではない
草原の向こうに
低周波でまわる三本の羽根が高い柱に
支えられていて
手のつけられない静かな茫漠が
あたしたちの周りに広がっている
手を高くかかげ
思いきり振っても
光るガラス片さえつかめない
それを昨日は
悲しいこゝろの渇きと呼んだ
草の厚みと冷たさ
広がるこゝろの手のつけられない茫漠
あたしたちの布地の暖かさ
人びとが家族と信じた
草の血の
薄められた記憶をたどれば
こなごなの朝のこゝろは
また巻き上がり
乳白の空の向こうに
ひとつの点が生まれる
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