忘れ女たち08/11/2011 tokyo-yaesu-11/14

13:08 08/28/2012

日刊忘れ女たち08/11/2012/03949

　　　奈良の託け

 

 

 

 

奈良の託（ことず）けを

藁にもすがりたく

あたしもその橋を渡ろうと思います

咽喉が歩いている

淋しい腺で繋がっている

青い鮫が渡ろうとして渡れないで煙吐いている

あたしはライブ映像を視ています

三人のひとがドットのあいだで

白く揺れていて

下を視ています

いま視ています

 

今日仕事場に

奈良の託けが侵入してきました

これは橋ではない

これが橋であるなら

お前はこの橋を視ていない

お前がこの橋を視ていないのだったら

あたしが視えているかどうかもわからない

視えていますよ

聴こえていますよ

橋視るひとも

渡ろうとする女たちも

みな煙のなかに生きています

おれが奈良の託けかどうかさえ判らないくせに

ケム吐く鮫など妄想して

今日も昨日と変わらないふりして

立っているのか

橋の前で

 

動いているものが何もない

日が照っているのだけがわかる

悲しみの腺も

何処で揺れているのかさえもうわからない

大きな吊り橋の下に

白濁の流れが激しくつめたい

ケム吐く鮫も

奈良の託けも

もう何処にも視えない

澄んだ空気の中で

あたし引っ張られたり吊られたりしているんだ

 

 

 

 

 

 

 

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