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忘れ女たち08/10/2011 tokyo-yaesu-10/14 [日刊忘れ女たち]

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21:53 08/25/2012 tokyo-kyobashi




日刊忘れ女たち08/10/2012/03948




   平松事件の真相
 

 

 

 

小学生のときからの習癖で

平松事件のことを語らなくてはならないのに

渋谷スクランブル童貞事件のことを語り出したくなるのだから

あたしには確実に影が生まれていて

彫刻のようなこゝろになっていると

云えるのだろうか

このように遠心分離してゆく自分を

あたしはずっと許して愛している

 

平松くんも

とべよし子さんも許してくれている

愛してくれている

らしい

かどうか確かではない

渋谷スクランブル童貞事件の語り出しを乗りこえて

ここまで来たのだから

平松くんのことを

飛沫くんと呼んでいた

 

とべよし子さんはその頃は週に三回マダムるのいで

働いていたのだが

九州熊本の古里で兵船ジャズ喫茶つくって

秋の朝顔のように生きている

飛沫くんが四年ぶりに店に現われたのを

あたしに伝えたかっただけなのだけれど

眼が水色に燃えあがっていて

あたしは紙の月ジャズ店の階段をころげ落ちながら

飛沫くんを待ち伏せたのだ

飛沫くんとは

平松くんのことだぜ

 

事件の頃は

まだ平松くんだった

事件のあとに確かに飛沫くんに様変わりをした

様変わりと云っても

平松くん自身が変わったわけじゃなくて

あたしたちの平松くんに対する想いが少しずつ変わってゆき

呼び名が飛沫くんと変わっただけだけれど

それは確かに平松くんが変わったと云うことなんだ

平松くんは変わった

 

あたしに呼び止められても

呼び止められても

平松くんは立ち止まらなかった

あたしは呼び止められたら

かならず立ち止まって

意気投合し

それがふりでも

次の世界を探そうとする

そんな平松くんだと信じて疑わなかった

でも平松くんは

少しずつ飛沫くんに変わっているところだったんだ

おい平松

それでいいのかよ

あたしは

酩酊に恐怖がチャンポンとなり

一人でブルーブラックなタクシーに乗り込み

使いはじめた携帯電話で

マダムるのいのとべよし子さんに

そんな恐怖を罵倒の言葉に変えて

ぶつけたのだ

こんな事件

思い出すのもう止めようぜ

あたしは平松くんも

飛沫くんもとべよし子さんも

そんな思い出とおなし位

愛しているのさ前言撤回のつもりで

生きているのさ許しているのさだ

平松くん

 

 

 

 

 

 

 


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