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忘れ女たち07/05/2012 ukima-summer-works-13 [日刊忘れ女たち]

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07/09/2012 08:53




日刊忘れ女たち07/05/2012/03912




   シンリのかくめい 5  〜端緒〜



あたしたちは咥えられている尻尾
森から子供たちが咽喉のなかの椅子を運び出している
隣のアケガタはひとりで脚を組んで
とてもつめたい澄んだ水のような呼吸をしている
横笛の音(ね)があたしたちの
中腹のものがたりを標(しる)しはじめる
「何処で・・・」
あなたの音色はそう聴こえる

それはあたしたちの親と
あなたたちの親を示している
浮世絵のようにソラの果てが赤く染まり
あたしたちははらはははらん離れてゆき
あたし以外のあなたたちは
卵を飲むのにとっても忙しい
はらはははらむあたしの親はほんとうを
ほんとうに知っていたのか
ほかのソラを覗いている
ほかのあたしはそう思うか
酷い夢が心地よいのは何故か

止まってはいけないよ
病院のうら側はちょうど良い人手のせいで
柔らかい緑に少しずつ滲みて拡がります
ほんとうは裏ではなく
かといって表ではありませんが
あなたが歩いてくるときに
こゝろの闇がいちばんあなたに近い一羽の鴉が
あなたのために羽根を落として
その酷い夢のなかに帰ってゆきました

彼はそう始めています
いま疑問を夏の銀河から迎え入れても
横笛の音は消えませんでしょうけれど
きっとあなたが消えてしまい
あなたの親が消えてしまい
こゝろの子供が消えてしまいます
もし消えてしまったら
もう点けることが出来ないだけじゃあなくって
もう一度消すこともできないのです

広い邦(くに)があります
色んな人が暮らしているのですが
横笛の好きな人もすこしは居ります
広いので広いのですこしは沢山になって
その沢山は死んでしまった沢山の人のように
いつまでも何処までもけっして重ならない
その人たちはただただ横笛の音色が好きで
だからただただ賢明に働いて
どんなところからでも集まってきます
ミドリに燃える岩の隙間や影からも
蝶の視えない夏の都会や蝶の彷徨う開拓の土地からも
それから神話やげんじつやシンリやかくめいからも
埋め立てられた運河のうえの道を通って
横笛の音色をことしも一度は聴こうと
それはそれは来るわ来るわ
巡礼者のように集まってきます
トシアキの坐っている此処から
そうしてそれは
すべてが視えているのです








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