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忘れ女たち07/04/2012 ukima-summer-works-12 [日刊忘れ女たち]

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07/09/2012 08:53




日刊忘れ女たち07/04/2012/03912




   シンリのかくめい 4



ユキエコの飼育した無言の鳩が死んだり
羽ばたいたりすると
血もまた間違える
逃げてゆく人と
救うものたち
その船に紛れてほんとうに
逃げてゆく
逃げながら忘れるために
殺してゆく
この曇り空はその分だけすこし明るい

もう一度魔笛のいのちを
そうしてほんとうの血を
さいしょ振り向かない
やがて振り向きたくなる
紐が蛇になる十畳間が二部屋つづいている
そこでトシアキは薄めた絵の具に睡眠薬をさらに溶き
ミヤザワのぽちりちくと鳴く線香花火の右の乳首を思いながら
朝焼けの般若板のうえで黒い碁石だけを食べている
やはりそう云う音がして
やはりそう云う声がする
水晶体のなかの妄想の泉がこんなに濁るのは
あなたを思ったり
思わなかったりしているからだ
白い玉に宿ったゆらゆら羽根の虫の声など
この夏の割れた恋の館に届かない
組たて方をだれも知らない百葉箱の燃える苦しみを
そうしてほんとうの花を

かくめいを
「血もまた恋をする」
そう云うことばに直してみようか思う
変幻の一眼レフを手に取ってその重さの意味を
記憶に補給する
ユキエコのからだじゅうが馬となってつぎつぎと
産まれてゆく
新しいシンリが荷車から手綱へびりびり新参して
危険で懐かしい尻が揺れている
そんな夕刻のオレンジ色の宝石や糞尿の音である
明日までいいえあさってまで
そのからだを洗ってはいけない
もう一度
こゝろを代えることができるまで
馬の排便を揺れながらじっと視ている

こうしていっつもあたしたちは光のことを
問いつめるまえに許している
それをどうこう云うわけではない
からだを洗え
もうこゝろを代えることができないのならユキエコの鳩よ
魔笛のいのちが終わってもほんとうではない愛が終わらない
そうして間違えのない血とほんとうの血
ほんとうの血とあらかじめ仕組まれている血が
その濃さと愛の深さを争う
あたしたちは
からだを洗うのをやめてあるものは丘にあがり
あるものは水面を三前趾足(さんぜんしそく)で歩きだし
それを視たまたあるものは早々とユキエコの鳩に変幻してソラに帰り
残ったミヤザワだけが浅瀬に歩きはじめ広場へと向おうとした
濡れたままの下着の紐をゆるく縛りながら
人間の左脚や右の乳首ですこしのあいだそれを視つめていた
そうこうするうちに
やはりかの女も一羽の鳩となって広場のソラを旋回したが
いつのまにか紐となって
そうして光らない点になると
そのまま何処かへ消えてしまった








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