忘れ女たち09/29/2012 Kyoto-4/6 [日刊忘れ女たち]
07:14 Berlin 09/15/2012
日刊忘れ女たち09/29/2012/03998
あなたを訪ねる列車のために
改札口であなたの名を告げた
係が違いますと
云って欲しいのでしょうが
無理です
あたしたちのプラットホームに
あなたたちの記憶はありません
そう告げられた
あなたが死んでしまってから
まだほんの数分
心臓に夢の残骸が届くまえにと
此処にきたのに
ポケットにはハーモニカ
胸には
騒乱の龍の刺青
乗り遅れるとか居場所がないとか
こゝろの仁義をわきまえず
此処にきたからか
あの城は遠い道のりだ
あの丘はやましい単線だ
たましいは乗り換え不能の一直線の絶望である
帰りかけるうしろの緑色の閃光から
こゝろの切符がめまぐるしくって
波うっている
あの改札口は切れ目のない嘘と虚像だ
では始めます
レスニングです
あなたの言葉が雨をふるわすたびに
入口で待っていた
あなたのこゝろが嘘を吸い込むたびに
出口で濡れながら待っていた
迷路の脱出法もわからないのに
ハーモニカの歯の永さ
遠い道のりの羽根の軽さ
つめたい雨の心変わり
嘘と云うため息の
とても三角錐の野心が笑う
駅を諦めて
鎹(かすがい)の並木道を裏返る
魚もとても三角錐の野心が笑う
毒花もとても三角錐の野心が笑う
従順な天才のように時間を跨ぐ
あたしはいつのまにか
板と鉄の荷車を曳いてかがみこむ
さらばとても三角錐の野心が笑うさらば
故郷の停車場よ
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