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『軽蔑のストロー』06/02/2013/04139 [日刊忘れ女たち]

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14:54:11 tsuyu-no-hana 06/02/2013





   軽蔑のストロー




降りてくるものがいるわけがない
黙って視ているものもいない
四十五年前のきっさ店に閉じこもり
受付で
アイスコーヒーを頼むと
席でと云われた

壊しているのはがっ校だと思う
がっ校を壊している
そして鳥も鳴いている
きっさ店であたしは勧誘(オルグ)している
東京でいちばん偉大な神宮のまわりを
取り囲むのはあたしたちだ
同じ顔をして
同じ帽子をかぶっている
同じちんちんをぶら下げている

びょう室から真昼を視れば
口唇に炎の化粧
メキシコ女の情熱のように
あたしたちの眉毛は濃くて太くて
もじゃもじゃごあごあと
繫がっている
聞いた訳ではないけれど確かにがっ校が壊されている
そんなこともあろうか確かにがっ校が壊されてゆく
壊されている建物はがっ校である
確実ではないけれど確信がある
こあされていう
検査台のうえで口を開けてこあされてあう
あるような気がする

席に着いた一級下の少年は
あたしを視てなんだ初めての経験なのか
そんな顔をして軽蔑のストローを剥いて
ほそい袋を縮めたり伸ばしたりした
父親に毛主席は
グレイトな人だと教えられたそうだ
あたしの云っているコトは
てんで伝わらなかった
それもいまと同じ

夏の始まりの
爽やかに晴れた日が梅雨の中休みだと云うのが
あたしには気に入らない
きのう梅雨入りしたって勝手に云っておいてさ
それは
ともあれ
壊しているのはがっ校だと思う
むき出しの折れ曲がった
階段のえんじ色の壁が此処から視える
このびょう院は
まだ壊れない








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