『トランスペアレンシー』05/08/2013/04126 [日刊忘れ女たち]
16:06 tokyo-ukima 04/29/2013
トランスペアレンシー
十七時 西向きの壁に歯切れの良いツツジの花びら
翌四時五十五分 東向きの断り書きに薔薇の花
血液の静けさがあなたの後ろ姿のように濡れている
起床前
看護師たちはしなやかにキーボードを敲く
患者たちは表立った意匠を吐き 吸い
携帯pcに刺青する
霞んだ拘禁マスクの網目の青のようにソラはいて
少し表紙の色にもなりかけている
不二のやま
その下方線を左から右に
白いトラックや銀の棺たちが無言で移動する
肩に粘土のように埋められた幸福のゆくえを占い
正面を視据えた混血の女の秒針は沈黙を撃ち落とす
誰があのトランスペアレンシーな桃色の表紙をめくるのだろう
あなたを仮想で視つめるだけで
ソラのように浮き上がります
然しソラのように
張りついてもいるのです
その翻る鯉のうろこのような光のすばやさは
きのう訊ねて来たあのひとの純真な人想いか
それともきょうやって来るだろう些細な心得え違いか
あなたであるあたし
花や葉の感謝の意味をまだ知らない
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