忘れ女たち07/30/2012 kobe-kyu-kyoryuchi-7/8 [日刊忘れ女たち]
日刊忘れ女たち07/30/2012/03937
浮間珠
逃げ帰って来たような気がするのは
街の名のせいだろうか
そう書くのも
何かのせいで
その何かのほうが
たぶん影響力ははるかに強いはず
そのこととあのことのつながりを
あまり気にしなかったのではなかったか
浮間珠に風を当ててみる
光はするものの浮き上がる気配はない
あたしの息はまた浅く
風の前ですこし止まる
耳の長く垂れた男がいたなあ
追放された名を背に刻印されていたけれど
逃げようともしたけれど
帰ってこなかったと云うわけだ
浮間珠の周りに
よわい夏の蝉が腹を視せて柔らかく死んでゆく
螺旋に廻るのは
右の耳鳴り
念ずることなど思いもつかぬほど疲れはてて
浮間珠の浮かぶところを思ってみる
白い波頭は大小と切れて
ソラと独立して浮かんでいるのが視える
記憶の中の記憶の箱を開けて
誰かを叩いているあたしを視つける
逃げ帰って来たような気がするのは
街の名のせいなのかしら
浮間珠に
そのことを告げて風にあたる
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